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相殺について

 相殺についても、従来は不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権(相殺される側の債権)とする相殺は一律に禁止されていました。理由としては、不法行為の被害者は治療費などで早急に金銭が必要であるから、現実の弁済が求められること、債権者による不法行為の誘発を防ぐことであるとされていました。  しかし、そのような趣旨からすると、禁止されている相殺の範囲が広すぎるという批判があり、改正民法では、悪意による不法行為に基づく損害賠償請求債権を受働債権とする相殺と、被との生命・身体の侵害による損害賠償債権を受働債権とする相殺のみを禁止しています。これにより、たとえば、交通事故の物損の請求権同士を相殺することができるようになりました。 また、これらの債権を他人から譲り受けた場合には、上述の被害者救済という趣旨が当てはまらないので、相殺が禁止されないことになりました。