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嫡出推定とは?生物学的親子関係は関係ない?法律上の親子関係決定のルール

 

法律上の親子関係と、生物学的な親子関係は、実は全く別物であるということをご存じでしょうか。

もちろん、多くの場合両者は一致するのですが、生物学上の父親と法律上の父親が違うというケースは一定数存在します。

民法上、法律上の親子関係を決定するルールとしてよく知られているのが「嫡出推定」です。

嫡出推定により推定された法律上の親子関係は、ひっくり返すのに厳格な手続きが要求されるため、しばしば生物学的親子関係と法律上の親子関係のずれが生じる原因になっています。

以下では、嫡出推定の制度を例にとって、生物学上の父親と法律上の父親がずれるケースについて解説します。


嫡出推定とは?

嫡出推定は、民法772条において定められた、親子関係を決定するためのルールの一つです。

 

1-1. 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する

民法7721項は、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」と定めています。

これは、女性が婚姻中に身ごもった子については、(実際には他の男性の子であったとしても)特に反証がない限り、法律上は夫の子として取り扱うということを意味しています。

※反証=推定された事実について、「そうではない可能性がある」と示すこと

 

1-2. 嫡出推定が及ぶ要件

嫡出推定が及ぶ要件は、「妻が子を婚姻中に懐胎したこと」です。

しかし、厳密にどのタイミングで妻が子を懐胎したかを特定するのは非常に困難です。

そのため、民法7722項により、以下の子は婚姻中に懐胎したものと推定されます。

①婚姻成立日から200日を経過した後に生まれた子

②婚姻の解消・取消し日(=離婚など)から300日以内に生まれた子

ただし、客観的に夫の子では絶対にありえないという状況がある場合にまで、嫡出推定を及ぼすのは適当ではありません。

 

そのため、以下の例のように、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかである場合には、例外的に嫡出推定を受けないとされています(最判平成12314日)。

・懐胎時にすでに夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われていた場合

・懐胎時に夫婦が遠隔地に居住していた場合

 

1-3. 嫡出推定はひっくり返すのが難しい

嫡出推定によって、「妻の夫」と「妻の子」の間には、法律上の親子関係が推定されます。

しかし、もしも妻が婚姻中に他の男性と関係を持ち、その結果として授かった子だとしたら、「妻の夫」と「妻の子」の間に生物学的親子関係はありません。

実は、事実として生物学的親子関係がない場合であっても、嫡出推定をひっくり返すためには、非常に厳格な手続きが要求されます。

嫡出推定によって推定された法律上の親子関係を否認するには、必ず「嫡出否認の訴え」という手続きによる必要があります(民法775条)。

嫡出否認の訴えには、夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければならない、厳しい期間制限が設定されています(民法777条)。

 

さらに嫡出否認の訴えは、出訴権が夫にしか認められていません(民法774条)。

つまり、嫡出推定が及ぶ子自身や、妻の側から、夫と子の間の法律上の親子関係を争う手段はないのです。

このように、嫡出推定をひっくり返すための唯一の手続きである嫡出否認の訴えが非常に厳格なため、嫡出推定をひっくり返すハードルはかなり高いといえます。

 

ただし,婚姻の解消又は取消し後300日以内に出生した,本来嫡出推定を受ける子であったとしても,医師による「懐胎時期に関する証明書」が添付され,その証明書の記載から,推定される懐胎の時期の最も早い日が婚姻の解消又は取消しの日より後の日である場合には,嫡出の推定が及ばないものとして,生物学上の父を戸籍上の父とする嫡出子出生届出が可能です。

(参照:http://www.moj.go.jp/MINJI/minji137.html(法務省HP))

 

最判平成26717日の解説

生物学的親子関係と、嫡出推定による法律上の親子関係の矛盾がまさに問題となったのが、最判平成26717日です。

 

同最判の事案の概要は以下のとおりです。

①戸籍上の嫡出子である子の側から、父親に対して親子関係不存在確認の訴えが提起されました。

②第一審原告(被上告人)である子については、第一審被告(上告人)である父親の嫡出推定が及び、法律上の親子関係が推定されていました。

③しかしその一方で、被上告人と上告人の間には、生物学的な親子関係はないということがわかっていました。

 

2-1. 【事案の争点】生物学的親子関係がなくても嫡出推定が及ぶか

本事案の争点は、夫と子の間に生物学的な親子関係がない場合であっても、民法の嫡出推定が及ぶかどうかという点です。

 

仮に嫡出推定が及ぶのであれば、法律上の親子関係の存否を争う手段は、夫からの「嫡出否認の訴え」に限られます。

この場合、子の側から法律上の親子関係を争うことはできませんので、本件の「親子関係不存在確認の訴え」は、不適法として却下されてしまいます。

 

一方、上記1-2で述べたような,そもそも嫡出の推定が及ばない場合であれば、子の側から夫に対して「親子関係不存在確認の訴え」を提起することが認められます。

この場合、本件では夫と子の間に生物学的な親子関係がないことがわかっていますから、結果として法律上の親子関係も否定されるという結論になるでしょう。

また,嫡出推定が及ばない場合に,子から生物学上の父に対して認知調停・訴えを行うこともできます。

(参照:https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_18/index.html(裁判所HP))

 

2-2. 【結論】嫡出推定優先|親子関係不存在確認の訴えは不適法

最高裁は、生物学的親子関係がなくても嫡出推定が及ぶと結論付け、子による親子関係不存在確認の訴えを不適法却下としました。

 

以下は判示の引用です。

「夫と子の間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり、かつ、子が現時点において夫の下で監護されておらず、妻及び生物学上の父の下で順調に成長しているという事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、上記の事情が存在するからといって、同条による嫡出推定が及ばなくなるものとはいえず、親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできないものと解するのが相当である」

つまり、生物学的親子関係はないのに、法律上の親子関係はあるという一見矛盾した状態が、司法の最高権威である最高裁によって承認されたということになります。

しかし、これは何ら不思議なことではなく、あくまでも民法に定められた嫡出推定のルールを文言どおり適用した結果に過ぎません。

本件の結論は、冒頭で申し上げたように、「法律上の親子関係と、生物学的な親子関係は、実は全く別物である」ということの表れといえるでしょう。

 

    まとめ

    本記事で解説した親子関係のように、客観的事実と法律上の取り扱いの間にずれが生じるケースは、他にも多々あります。

    これは法律の分かりづらい部分でもあり、また奥深い部分でもあるといえるでしょう。

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